国王

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「菜乃の両親と理玖の祖父さんにも理解してもらえた。それから……」 俺は歩きながら朱莉に目を向けた。 「朱莉にはちょっといい報告がある」 「ん?いい報告?なによ?」 俺はそれには答えずに、笑いながら荷物を置いている部屋を開けた。 荷物の中からたくさんのお土産と、皆の手紙を取り出す。 「じゃあまずは菜乃。菜乃のお父さんとお母さんが病気にかからないようにしろって」 菜乃に少し膨らんだ封筒を渡した。 菜乃は少し驚いていたが、微笑みながらそれを受け取った。 「……うん。ありがとう」 「ああ」 頷きながら、今度は理玖に向き直った。 「それから理玖。徹二さんが、修練を惜しむなと」 「ふっ、あの人は相変わらずだな」 理玖はやれやれと肩をすくめながらも、嬉しそうに俺が差し出した封筒を受け取る。
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