国王

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「ああ、本当のことだ。明菜さんはここ数カ月で少しずつだが状態がよくなっている。俺が行っているときにはなかったけど、何度か意識が目覚めたこともあったそうだ。先生は奇跡だと言っていたよ。完全に回復することはないらしいけど、それでももしかしたら日常生活に戻れるくらいにはなるかもしれないそうだ」 朱莉は目を見開いたまま、口をわなわなと震わせていた。 そして、理玖に目を向け、俺に目を向ける。 「……ほ、本当に?」 俺は微笑みながら目を閉じて頷いた。 「本当に」 俺が言い終わったとき、朱莉は理玖に飛びついていた。 「……理玖……よかった……よかったよぉ……」 理玖にしがみつきながら目にたくさんの涙をためている。 「……ああ、本当に、よかった」 理玖もとても嬉しそうに穏やかな笑みを浮かべ、目に薄ら涙が見える。 二人とも明菜さんのことで辛い思いをしていた。 そんな二人にとって、これ程嬉しい知らせはないだろう。
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