国王

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「菜乃」 俺は指をちょいちょいと動かして、一部の荷物を持って菜乃を部屋の外に促した。 菜乃を連れ出して、そっと扉を閉める。 「菜乃は知ってるのか?朱莉の母親のこと」 「うん。知哉君があっちに帰ってる時に色々あってね」 「そっか。ま、それは後で聞くよ。先に手紙を読むといいよ」 俺がそう言うと、菜乃が突然俺の手を掴んだ。 いきなりの出来事に体がふっと熱くなった。 「菜乃……?」 俺が首を傾げながら尋ねると、今度は菜乃が俺に抱き着いてきた。 「ちょ、ちょっとどうしたんだよ」 菜乃は俺に抱き着いたまま、ふるふると体を震わせていた。 俺はそれが泣いていることだと気づく。 「本当に……心配した……。無事に……帰ってくるかどうか……。知哉君だけに、大変なことを任せて……」
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