国王

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「久しぶりのあちらはどうでしたか?」 俺は椅子に座りながら小さく笑った。 「不思議な感じでした。久しぶりに家に帰っても、こちらで過ごしていた時間が結構長いせいか、帰ったという実感が沸きませんね」 「そうですね。こちらの世界のこともあるから仕方ないですね」 ツバサのこともあるし、帰っても日常とは全く違うことをしていた。 俺が以前生活していた日常に帰るまで、本当に"帰った"とはならないのだ。 「ふむ、亜界ですか。それは実に興味深いですね」 白衣を着た月島さんは、見た目通り研究心丸出しで呟いた。 その顔は実に楽しそうで、輝きに満ちている。 「月島さんも異世界のことを知っているんですね」 俺が感想を述べると、月島さんは中指で眼鏡を押し上げながら頷いた。 「もちろん。オリンポスのメンバーは全員知っていますよ。異世界のことは神初さんから聞いていますから」 オリンポスのメンバーは全員か。 神初さんが創立者ということだから、不思議ということはないな。
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