国王

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その時、俺の手を見ていた月島さんが会話に入ってきた。 「あれは大変な騒ぎでした。優衣さんは王女以前に国民のかなりの人気があったので、臣下の者達も本気で止めに入ってましたね」 ……なんとなくその光景が想像できる気がする。 ブレスでさえ学内外問わずに大人気。 王女ともなれば、さらに目立って人気者だったろう。 「そして、不意にどこからか上がったのが、悠斗さんの婚約者になればいけるのではないかということ。そうなれば、さすがに王女と理由だけで縛っていくことは難しいからです。元々ミネルヴァ国は王族でもかなり自由なんです。ただ、優衣さんの場合は皆泣かんばかりの勢いで止めにかかりまして……」 どんだけ人気だったんだ。 「でも最終的に、悠斗さんが優衣さんを含めた臣下や国民の目の前で、『優衣は俺の婚約者だ!!一緒にブレスに連れて行く!!誰にも文句は言わせない!!』と公言しまして、その一言で決まってしまいましたね」 か、かっこいいな~悠斗さん。 確かにあの悠斗さんならそれくらいのこと平気で言ってのけそうだけど。 優衣さんはその時のことを思い出しているらしく、微笑みながら目を閉じていた。 「でも私が婚約したことを表明した時は皆さん喜んでくださいました。たまに帰っても明るく迎えてくれます」 そう言う優衣さんは、本当に幸せそうだった。 それからしばらくして、月島さんは俺の手の魔法式を調べ終わった。 「うん。実に興味深いですね」 「何かわかったんですか?」 俺は期待して身を乗り出した。 何かわかったのなら、何かに応用できると思ったのだ。
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