プロローグ

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プロローグ

夜中の病院。 そこの廊下のベンチに30代後半らしき2人の男女が不安そうに座っていた。 女性の方が男性に震えるように話し始める。 「お父さん……佳奈は……佳奈は大丈夫かしら……」 「……き、きっと大丈夫だ。先生が何とかしてくれる……!」 会話からしてどうやらこの2人は夫婦のようだ。 男性が返したその時、ベンチの隣にある扉から白衣を着た男が現れる。 容姿から医者というのが分かる。 医者に気付き、2人は同時に立ち上がった。 「先生……佳奈は……」 「話の前に、まずこちらへ来て下さい」 男性の言葉を遮り、医者は深刻そうな顔でそう言うと、再び扉の奥へ入る。 医者に続いて2人も入り始めた。 ★ 2人は個室に案内された。 3人とも、椅子に座っている。 男性は再び医者に尋ねる。 「先生……佳奈は……大丈夫なんですか?命に問題は……?」 男性の尋ねに医者は俯き加減だった。 その様子に女性は察し、口を両手で覆う。 「そんな……」 「……残念ですが、今の医学では……不可能に近いです」 その言葉を聞いて女性はその場で泣き叫んだ。 男性の方は身体を震わせている。 「な、何言ってるんですか……。佳奈はまだ若いんですよ!?これから楽しい事や辛い事、色んな事を経験して成長していく年ですよ!?救ってください……佳奈を救ってください!」 男性は叫びながら両腕で医者の肩を揺する。 医者は揺すられても俯き加減で、2人と目を合わせようとしなかった。 どうしようも出来なかった。 彼女の心臓はほとんど停止に近い。 それでまだかすかに存命している分、奇跡な方だ。 するとその時、 ……! 突然医者の両目が見開いた。 「……待って下さい」 「…?」 男性は揺するのを止める。 医者は2人の方を見つめる。 そして言った。 「まだ……方法はあります……!」 その言葉に2人とも見開く。 「ほ……本当ですか!?」 2人同時に叫んだ。 医者は力強く頷く。 医者が思いついたのは、日本にとってかなり困難な手術の方法だった。 それでもやるしかない、時間はないんだ……! その手術の名は…… 「はい……臓器移植です」
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