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『え?お辞めになる?ええ…そうですね。分不相応の相手より身の丈に合った相手の方がよろしいでしょうな』
俺の言葉に、悪魔は軽く頷いた後、威儀を正した。
『ではお客様。私めはこれで失礼致します』
『え?俺はまだ何一つ願いを叶えてもらってないぞ!?』
驚く俺に、悪魔は申し訳なさげに口を開いた。
『申し訳ありませんが、それは聞け無いのです。
ええ…それはですね…私めはお客様の《三つの願い》を叶えてしまっているからですよ。
《不老不死の願い事を取り消す願い》
《大金持ちになる願い事を取り消す願い》
《素晴らしい恋人が欲しいと言う願い事を取り消す願い》
ほら…全て叶えて差し上げてありますでしょう?
なので、お客様のこれ以上の願い事は聞け無いのです』
『なんだって!?それじゃ騙したのか!?この詐欺師!』
『ははは…詐欺師とは…これは心外ですね。私めはお客様に《限りある生を、幸せに生きる》と言う物をプレゼントしたのですよ?ええ…分不相応な物を楽に手に入れてしまうと、その有り難みは解らないものです。お客様はそれを知る事が出来るのですよ?これは素晴らしい事ではありませんか!
では…お客様がお亡くなりになる時に、魂を頂きに上がります』
怒りに震える俺に、悪魔は現れた時と同じく…優雅に最敬礼をし、消えていった。
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