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『貴方は…いったい?』
私の言葉に、その人物は晴れやかな表情で答えた。
『私めをお忘れでしょうか、お客様?まぁ…あれから60年も経ちましたから…』
『60年前に?』
『ええ…60年前にお会いしておりますぞ。私めは悪魔・ベリアル、ご契約通り…魂を頂きに上がりました』
ああ…思い出した。
私の願いを全て《分不相応》と言って叶えてくれなかった、あのペテン師の悪魔。
まぁ確かに、あの頃の私には《分不相応》な願いだったな…
『限りある生を生きる幸せ』
ああ…全くその通りだったな。今の妻と結婚して、子供が産まれ、可愛い孫も出来た。
不老不死にも、大金持ちにもなれなかったが…
素晴らしい妻と家族は出来た。これ以上、望むものはないな…
これも、あの悪魔のおかげだ。
彼が願いを叶えてくれなかったおかげで、こんな素晴らしい人生を過ごせたんだ。
私の心にある覚悟が芽生えた。
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