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その様子は、人智の及ばない「恐るべき存在であるはずの悪魔」には似つかわしくないもので…
俺は目の前の「大悪魔」であるはずの存在に、奇妙な親近感を覚えた。
『あんたも大変なんだな…』
不意に俺の口から出た言葉に、悪魔は嬉しそうに微笑んだ。
『お気遣いありがとうございます!本来はお客様(召喚者)にするべき話では無かったのですが…
お客様があまりに良い人そうなので、ついつい愚痴をこぼしてしまいました。
どうかご容赦を…
それでは、お客様。
これよりお客様の願い事を《三つ》叶えて差し上げます』
悪魔は魔法陣から出て、俺に近づいてきた。
『本来は一つだけなのですが…お客様は特別に三つにして差し上げます。
あ…《願い事を99個に》とか…《生涯、ずっと願い事を叶えろ》と言うのは、《新しい労働基準法》により禁止されておりまして…それは駄目ですので、それ意外で三つと云う事です。よろしいですかな?』
悪魔は確認を取るように言うと、また言葉を続けた。
『昔は契約者に長い間仕えると云う事もありました。ええ…かく云う私めも大昔にソロモンと言う、ユダヤ人の王に長い間仕えた事がありましたから…
法が改正となった今は、《願い事は一つ》となりまして…
ですがお客様!お客様は特別に三つにして差し上げます、ええ…私めの愚痴を聞いて頂けましたので、ささやかなサービスにて…
あ…願い事を叶える対価は、昔から《お客様の魂》と決まっておりますので…
軽々しくお決めにならず、充分に熟考しお決めになって下さい。
ええ…時間はたっぷりございますので…』
悪魔はそう言って、にこりと笑った。
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