23人が本棚に入れています
本棚に追加
『お決まりになられましたか?早速ですが、お伺いいたしましょう。
お客様はどのような願いをお望みですか?』
考えこむ俺に、悪魔は不意に声をかけてきた。
『ああ…一つ目は不老不死で』
俺の言葉に、悪魔は顎に手を当て…ちょっと考えこむような仕草をした。
『ふむ。不老不死でございますか…何時の世も不老不死を求める方はいらっしゃるものです。ですが、言わせてください。そんなものに何の価値があるのでしょう?』
怪訝な顔をする俺に、悪魔は言葉を続けた。
『いえ…別に、その願いを叶えられない訳ではございません。私めは悪魔でございます、お客様が望むなら…どのような願いでも叶えて差し上げますとも!しかし…本当に不老不死を望んでおられるのですか?
不老不死とは…思っておられるほど良いものではございませんよ?
だらだらと生き続ける人生に…何の意味がございましょうや?花は散ってしまうからこそ美しいのです』
悪魔は首を振り、嘆かわしげな仕草をした。
『私めが言うのも何ですが…限られた時間を精一杯生きてこそ、命が輝くというものでしょう?それに、不老不死とは孤独です。周りの人間が死んでいく中、知己なる人々が居ない中、自分だけがこの世の終わりまで生き続ける…ああ、その孤独がもたらす寂寥感と言ったら!全く悪魔の私めと言えど怖気を催してしまいます!
その孤独に耐えられるご覚悟…お客様にはございますか?』
その悪魔の言葉は、俺の決心をぐらつかせるのに充分だった。
最初のコメントを投稿しよう!