第一話

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確かに悪魔の言う事はもっともな事だった。 親しい人間が居ない世界で…生き続ける事の孤独感は、想像を絶するに違いない。 俺は考えた挙げ句、不老不死を止める事にした。 『不老不死になる願いは止めよう』 俺の言葉に、悪魔は拍子抜けした表情を浮かべた。 『え…そうですか、おやめになられますか… ええ…そのほうがきっと、お客様の為になることでしょう。 ええ…間違いなく幸せなお時間をお過ごしになられるかと… 私めは悪魔なのですが… 知己で親愛なる人物が、まるで花が枯れて行くかのように消え去って行く時…そんな時の人々の感情をよく存じ上げております。 そして…その取り残されたような、なんとも言えない感情も… お客様…この世に生を受けし物で、滅びぬ物などないのです。そして…《滅び》があるからこそ、それまで精一杯生き抜く…これが《生きる》と言う事の意味なのですよ、お客様』 悪魔は俺が理解したかを確認するかの様に、俺の目をじっと見つめた。
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