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『お客様、次の願い事はお決まりになられましたか?』
考えこむ俺に、悪魔は願いを言うよう促した。
『ああ…一生遊び暮らせる大金が欲しい』
『ふむふむ、大金をお望みですか。たしかに、人間の世の中にお金は欠かせないものですね。お金があれば、大抵のものは手に入れることが出来ますな。
ただし、それはあくまで物質的なものだけでございます。
精神的な満足とは別ではございませんか?
いくらお金を積んだところで…買えないものは数多くありますな。
ええ…星の数ほど、あるのでは無いでしょうか?』
悪魔は一度言葉を切り、俺の顔をじっと見つめた。
『それでも金があれば、幸せに暮らす事は出来るだろう?』
俺の言葉に、悪魔はまた顎に手を当て、何かを思案するような仕草をした。
『ふうむ…確かにそうですな。しかし…逆に、お金によって失ってしまうものも数多くあります。
分不相応な大金を手にしたがために、今ある幸せを失ってしまった…
そんな話、お客様も耳にしたことはございませんか。
使いきれない大金なんて、まさに手に余る代物でございましょうよ。
ええ、そうですな…例えば、お客様。ひょんな事で大金を手になされた事、今までにおありではありませんか?』
『いいや、無い。ギャンブルで少し勝った事があるぐらいだ』
俺の言葉に、悪魔は致し方ないと云った感じで首を振って見せた。
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