第一話

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『お客様、次の願い事はお決まりになられましたか?』 考えこむ俺に、悪魔は願いを言うよう促した。 『ああ…一生遊び暮らせる大金が欲しい』 『ふむふむ、大金をお望みですか。たしかに、人間の世の中にお金は欠かせないものですね。お金があれば、大抵のものは手に入れることが出来ますな。 ただし、それはあくまで物質的なものだけでございます。 精神的な満足とは別ではございませんか? いくらお金を積んだところで…買えないものは数多くありますな。 ええ…星の数ほど、あるのでは無いでしょうか?』 悪魔は一度言葉を切り、俺の顔をじっと見つめた。 『それでも金があれば、幸せに暮らす事は出来るだろう?』 俺の言葉に、悪魔はまた顎に手を当て、何かを思案するような仕草をした。 『ふうむ…確かにそうですな。しかし…逆に、お金によって失ってしまうものも数多くあります。 分不相応な大金を手にしたがために、今ある幸せを失ってしまった… そんな話、お客様も耳にしたことはございませんか。 使いきれない大金なんて、まさに手に余る代物でございましょうよ。 ええ、そうですな…例えば、お客様。ひょんな事で大金を手になされた事、今までにおありではありませんか?』 『いいや、無い。ギャンブルで少し勝った事があるぐらいだ』 俺の言葉に、悪魔は致し方ないと云った感じで首を振って見せた。
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