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『それでは私めの話が理解出来ぬのも…無理はありませぬな。そうですな…では、ある日突然、見た事もない莫大な額のお金が、貴方宛てに送られてきたとしましょう。たいした事のない金額なら、数日の内で使い切れるかも知れませんが…
そんな莫大な金額なら如何でしょうか?』
『金はいくらあっても邪魔にならないだろう?あんたの言う莫大な金があれば、俺は一生遊び暮らせる』
俺の言葉に、悪魔は軽くため息をつき頷いた。
『邪魔にならないですか…皆様、最初はそうおっしゃられますが…
このお金と云うもの、実はなかなか厄介な代物でして…
ええ、最初は皆様とうきうきした感情に支配され、幸福な時間を過ごしていますが…
これが永きに渡ると…お金を守るために周りが全て敵に見えてくる方がちらほらと…
お分かりになりますか?お金と云うものは元来、道具もしくは手段なのですが…
それが身分不相応のお金を持つ事により、《逆に道具に使われる》と云う事態になる訳です。そして…お金を守るために疑心暗鬼になり…周りとの接触を絶つため必然的に孤独になり、最期には…
お客様、貴方様はそのような人生を幸せと思いますか?それでもよろしければ…このベリアル、貴方様を大金持ちにして差し上げましょう』
悪魔の言葉に、俺の決心は揺らいだ。
疑心暗鬼になり人を疑い、孤独になる人生なんて…まっぴら御免だ。
考えた挙げ句、俺は願いを取り下げた。
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