その彼

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~藤堂朝陽(トウドウアサヒ)~ 多分私は、人より口数が少ないと思う。 狙って面白いことも言わない。 話の主導権を自ら握ることも滅多にない。 学力も運動能力も容姿も至って平凡だ。 所謂、地味キャラ。 クラスでも影の薄い方だと自覚している。 それでも学校は嫌いじゃなかった。 別に大そうないじめにあっているわけでもない。 気の合う友達と平和な日常を過ごすことは、例え周りから見ればつまらなそうであっても、本人の私としては悪くない。 「ねぇねぇ朝陽、今日の放課後って、部活あるよね?」 「うん、平日だしいつも通りあるよ」 「そっかー、ちょっと付き合ってほしい所があったんだけどさ」 そう親しげに話しかけてくるのは、幼馴染みの遠野美月(トオノミヅキ)ちゃん。 幼少時から親しくしているご近所さんだ。 彼女とは高校二年のクラス替えで一緒の組になり、グループは違うが普段もよく言葉を交わしている。 「あ、もしかして彼氏の誕生日プレゼント選び……?」 「そうなんだよね。朝陽はセンスあるから、一緒に選んでもらおうかなって」 美月ちゃんには付き合って半年になる彼氏がいる。 彼女は元々明るい性格の持ち主だが、彼氏が出来てからは更に日々ハツラツとしていた。 まさに、キラキラしている人、と例えるのにふさわしい人物。 でも正直、晋一郎と美月ちゃんが恋人関係になるとは私も思っていなかった。 晋一郎とは、同じ学校に通う現在高校一年生の私の弟である。
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