ブルーランペイジ

彼、甘くない

商店街の中に位置する楽器店の駐車場。

いつも通り過ぎるばかりで、中に入るのは初めての経験。

自動ドアを潜った途端、聞き覚えのある有名なクラシック曲が辺りを包み込む。

店内の手前には楽譜類、奥には様々なの楽器が所狭しと並べられていた。

ピアノにギター、ベースにドラム。

バイオリンや打楽器……そして、奥のガラス張りの棚には、ピカピカのクラリネットも飾られていた。

「すみません、これってどこにあるか教えてもらえますか」

コルクグリスにクリーニングペーパー、キーオイルにガーゼ。

形も大きさもどういった時に使用する物なのかも分からない。

知識ゼロのまま、近くの店員に右端のトレーの前に連れていかれた。

――分っかんねー……。

唯一知っていたリード(薄い木の板)にしても、種類が多過ぎて知ったもんじゃない。