彼、甘くない

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二人の会話を横に、一方こちらは子供みたいなことをお願いしてくる。 「怜君、お願い。ピーマン食べてくれる?」 「毎回思うけど、ピーマン嫌いって子供だよね」 俊のお弁当箱から炒めてあるピーマンを摘まむと、嬉しそうにお礼を言われた。 「だって苦いじゃん。俺、大っ嫌い」 「美味しいのに。ちょっと頑張ってみなよ」 話の流れで試しに一つ……と口に入れた瞬間、俊は顔を真っ赤にして涙ぐむ。 「ちょっ、泣くってさぁ……お前それ、アレルギーかなんかじゃ」 「泣いてないもん!」 「泣いてんじゃん」 給食を食べきれず居残りしている小学生のような姿に、俺は声を上げて笑ってしまった。 「もういいよ、食べるから」 「……ありがとう」 女子に負けず劣らずふわふわしている俊は、クラスのみんなに好かれ、マスコットキャラ的存在。 今思えば、仲良くなれたことが不思議なくらい。
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