彼、甘くない

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午後、ポカポカの陽気が教室を満たし、眠気という最強の敵が生徒達を襲った。 そのうちの被害者の一人に当たる俺は、放課後目を擦りながら、ノロノロと音楽室へ向かう。 珍しく教室でグダついていたから、いつもより来るのが遅い。 ――今日も塾とかホント怠いんだけど。 扉に手をかけると、既に鍵は開かっていて、中には席につく先輩を見つけた。 「こんにちは」 今日は頑張れそうにないかも、と思いながら重い足取りで準備室へ向かう。 すると、その途中肩を叩かれ引き留められた。 振り返ると、下からこちらを見上げる先輩は、首を傾げて顔を覗き込んでくる。 「何なんですか」 一体。 「大丈夫?」 「……は?」 ポカンと立ち尽くす俺を、彼女は心配そう伺う。 「目、真っ赤……。嫌なことでもあった?」 何これ、もしかして泣いた後だと思われた?
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