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「いや、失礼。 …ならアナタはなおのこと、アレウス様とは離れた方が良い。 …良いですかぁ?」
ジンさんは自分の膝に置いていたノートパソコンを棚に置き、座る向きや体勢を変えて改めて私と対峙した。
「マフィアは人を殺します、しかもえげつない方法で。 僕もアナタが会ったシグルドさんも。 アレウス様も…」
ジンさんの口調はやけにゆったりだ。
まるで私に理解させようとしているみたいに。
「アレウス様なんて特にそうです。 産まれたばかりの赤ん坊も、年老いて歩けない老人も…あの方は必要とあらば何も躊躇わず命を奪うでしょう。 実際、僕も目の前で見てますからね、アレウス様が人を殺すところを」
ジンさんはゆっくり、ゆっくりと私が聞き取りやすいように話を続ける。
「裏社会の中でもアレウス様や僕達は特別です。 アナタが蚊を殺す感覚と僕達が仕事で人を殺める感覚は同じ。 なにも感じないのです」
「……………」
「アレウス様は裏社会で何と呼ばれているかご存知ですか?」
私はジンさんの問い掛けに首を左右に振った。
「"裏"の世の更なる"闇"すら統治する絶対的存在…"裏闇)の帝王"。 裏の住人達にとっては神より尊き存在です」
「神より尊き存在、裏闇の…帝王…」
私が復唱するとジンさんはゆっくり、深く一度だけ頷いた。
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