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ヴー…ヴヴー…
ヴー…ヴヴー…
「…っ」
静かだった部屋に鈍い音が聴こえ、私は肩を跳ね上げて驚いた。
カバンの中から音がする。
この音はスマホのマナーモードだ。
私はカバンを漁り、スマホを出して画面を見ると、体から熱が一気に引くような感覚に囚われた。
着信の相手…それは今は会いたくも声も聞きたくない、レヴァンことアレウスその人からだ。
「もし、もし…」
暫く着信画面を見たあと、私は意を決して通話ボタンをスワイプして電話を繋げた。
『お、出た出た。 寝てるかと思ったぜ』
受話器から聴こえたのは今の私とは対照的な明るいアレウスの声だった。
「…………ごめん。 ちょっとお風呂に入ってた」
どうしよう…声があまり出ない。
『……? そりゃ悪かったな』
「ううん。 …何か用なの…?」
出ない声を何とか声を振り絞りながら会話を続けようと必死になる。
スマホを持つ私の手は静かに小さく震えていた。
『楓、お前…何かあったか?』
暫くの沈黙のあと、アレウスの言葉が射るように鼓膜をふるえさせた。
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