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綾瀬鏡堂は、名前の通り鏡屋である。
祖父の趣味で世界各国から取り寄せた
珍しい形や模様を施した一品物の鏡を取り寄せているのだ。
何故、祖父が鏡を集めだしたのかは定かではないが、店を構えて30年。
店の外観も中々の渋味が増して、壁や天井は小さなヒビが入ったりしている。
店内は天井にまで届く木棚の中にいくつもの鏡が整然と並べられており、決して鏡に埃が積もることがないよう、祖父は一日三回は綺麗な布で鏡を拭いていた。
「じいちゃん、町内会の将棋戦行ってくるから、靖は留守番しといてくれ」
そう行って祖父が出ていってからすでに二時間が経過していた。
まだ小学五年生の靖葉だが、言われた通り店番…もとい留守番をしていた。
客がこの店に滅多に来ない事も、祖父が店番を任せた一因だ。
鏡なんて最近は100円ショップでも買える。
わざわざ鏡屋に来る客は少ない。
靖葉が店の入り口に視線を向けると、
その横のショーウィンドウから、太陽の光が注ぎ込まれ店内の鏡をキラキラと光らせていた。
靖葉はいつもの定位置である、お客様専用に設けられたソファーに腰掛け、ポウッと店内を眺めていた。
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