第三話 不良でユルい彼。

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「っ……!」 顔面に響く痛みに思わずその場にしゃがみ込む。 痛みの次に怒りが沸いてきて、いきなり出てきたことを怒鳴ろうとドアを通って来た相手に掴み掛かる、が。 「…………あ゛ん?」 掴み掛かった相手の顔を見た途端、サイコの脳内の怒りは全て恐怖へと変換された。 なぜなら、サイコが掴み掛かった相手は、 「なーにお前?やんの?オレに掴み掛かるって事は喧嘩売ってるって事だよなァ?」 この学園一の不良だからだ。 城之内 正人(まさと)。 名前とは真反対で全く正しくない人間(つまり不良)であり、ユルい喋り方とは裏腹に煙草は吸うわ授業は出ないわ短気だわでとてつもなく苦手な人物だ。 そして何より厄介なのが… 「お前オレがなんのマスターだか知らねーっしょー?お前みたいなモヤシさァ、“電気能力(ボルトマスター)”のオレにかかればチョチョイノチョイなんだよねェー」 こいつの“電気”を操れる能力。 なんと俺と対等の“ブラック”の称号を持つ最強な能力なのだ。 いくら戦闘を好む俺でも、俺と対等の称号を得る人物との戦闘となれば恐怖が沸く。 しかも、こいつの“喧嘩”を見た事があるから、余計に怖い。 どうにかならないかと恐怖で固まる思考を動かすが全く策が浮かばない。 最後の妥当策として相手も人間だと割り切って、思いきって場を和ませようと話しかける。 「あの…っ「あ゛ん?あー、お前、なんか見た事あると思ったら同じブラックじゃん?なーんだったっけェ?エアロマスターだっけー?」 えぇ!何で知ってんの!? 予想外の展開に驚きを隠せないサイコ。不良で学園の有名人の彼に逆に知られているのはむず痒くもあり、怖くもあった。 サイコは気付いていないが、“ブラック”という最強の称号を持つ者を学園で知らない人はいないに等しい。 自身よりも他人に興味がある彼にとって、自分の事を知られている事が不思議で堪らなかった。
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