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「…………嘘だろ……?」
ギリギリセーフに校内に入り、チャイムが鳴ると同時に席に着いて遅刻扱いはされなかったものの、今は遅刻よりも非常にやばい事態だ。
なんと毎日欠かさず付けていた“ブラック”を示す“マスター”の証のバッジを忘れてしまったのだ。
バッグの中を探しても、制服のポケットを探してもないので恐らく家にあるだろうが、本当にやばい。
今日は服装検査があるというのに───…
「どした?サイコ」
ポン、と突然肩を叩かれびっくりして上下に跳ねる。
誰かは声で分かったが確認するべく後ろを向く。
人物を確認すると、やはり、俺の数少ない友達の内の一人、篠原 逞(たくま)だった。
事情を説明すべく、バッジを忘れた、と告げる。
すると逞はお気楽な表情からみるみると焦った表情へと変わっていった。
「おまっ、それやばいじゃん!!今日服装検査あんのに!!風達に見つかる前に、家帰って取ってこいって!」
「だよな……一時間目ハゲ太の授業だし行ってくるわ。ハゲ太には適当に誤魔化しといてくれ!」
「おっけ!風達に見つからないようにな~」
頼もしい逞の返事を背中に駆け足で教室を出た。
廊下を走り、階段を降りようとする。
その瞬間。
辺りの温度が、一気に下がった。
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