星降る夜に

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「うお、寒。この季節に、こんな寒い思いをするとは思わなかった」 「星見ってのはこういうもんなのっ。だから暖かい格好してきてねって言ったのにぃー」 とある春の日の夜。 草原に仲良く並んで寝転ぶ男女がいた。 「こんなところにお前を連れ出したなんてお前のお袋にバレたら、俺は生きていられないな、由貴」 男は毛糸のマフラーを鼻の上まで引っ張り上げた。 由貴と呼ばれた女性は、そんな男を見て、可笑しそうに笑う。 「大丈夫だよ、ママもまさか病院を抜け出すなんて思わないよ。明け方までに戻ればバレないって!」 「……そうだな」 男は、どこか諦めたようにため息をついた。 由貴とは長い付き合いで、その性格も知り尽くしているのだ。 浮かない顔の男に対して由貴は一点の曇りもない笑顔のまま、そんなことより、と続ける。 「ほら、あそこに北斗七星があるでしょ。その柄の部分をぐぃーと伸ばしたとこにあるのが、うしかい座のアルクトゥールスとおとめ座のスピカ。その二つとしし座のデネボラを結んでできるのが、春の大三角。さらにりょうけん座のコル・カロリも加えちゃえば、春のダイヤモンドの出来上がりー!」 「詳しいんだな、由貴は」 男にそう言われ、由貴はえへへー、と得意気に鼻を掻いた。 男はそれを見ながら、マフラーをさらに上まで上げる。
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