ココロ

2/2
前へ
/8ページ
次へ
 心が時々、空っぽになって、もう何もかもがどうでもいいと感じる時がある。 僕の悪い癖だ… テレビ越しに、お昼のニュースが流れてくる。この番組の顔である名物の美人アナウンサーが、表情一つ崩さずに淡々と悲惨な事件を伝えている。 (へぇ…) 恋人同士、別れ話の拗れから起きた事件のようだ。確かに悲惨な事件ではあるが、僕の心には微塵も響かない。しょせん僕の知らない、外での事件だ… そう思うと、急に別の思いにかられるものだ。 (腹、減ったな…。) 遅めの昼食を摂ろうと、重い腰を持ち上げ、キッチンへ向かう。 (ピンポーン) 来客を知らせる呼び鈴が響いた。 「まったく、誰だよ。」 空腹から、若干の苛立ちを覚えつつ、玄関へと向かう。 扉を明ける。そこにたっていたのは… 「お前…。」 …昨日、僕が一方的に別れを告げた元彼女だった。 「…。」 彼女は無言で入口に立たずんでいる。 ただ…その震える手には、鈍く、鋭く光る包丁が握られていた。 思わず僕は目を見開いた。 彼女はそっと、一言呟いた。 「あんたの心…本当に空っぽなんだね、何も感じないんだね……酷いよ。」 そう聞こえた瞬間、僕の空っぽになっている心に向かって、その刃先が突き立てられていた。 僕の心は…ココロは…。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加