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心が時々、空っぽになって、もう何もかもがどうでもいいと感じる時がある。
僕の悪い癖だ…
テレビ越しに、お昼のニュースが流れてくる。この番組の顔である名物の美人アナウンサーが、表情一つ崩さずに淡々と悲惨な事件を伝えている。
(へぇ…)
恋人同士、別れ話の拗れから起きた事件のようだ。確かに悲惨な事件ではあるが、僕の心には微塵も響かない。しょせん僕の知らない、外での事件だ…
そう思うと、急に別の思いにかられるものだ。
(腹、減ったな…。)
遅めの昼食を摂ろうと、重い腰を持ち上げ、キッチンへ向かう。
(ピンポーン)
来客を知らせる呼び鈴が響いた。
「まったく、誰だよ。」
空腹から、若干の苛立ちを覚えつつ、玄関へと向かう。
扉を明ける。そこにたっていたのは…
「お前…。」
…昨日、僕が一方的に別れを告げた元彼女だった。
「…。」
彼女は無言で入口に立たずんでいる。
ただ…その震える手には、鈍く、鋭く光る包丁が握られていた。
思わず僕は目を見開いた。
彼女はそっと、一言呟いた。
「あんたの心…本当に空っぽなんだね、何も感じないんだね……酷いよ。」
そう聞こえた瞬間、僕の空っぽになっている心に向かって、その刃先が突き立てられていた。
僕の心は…ココロは…。
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