その日、少女に誘拐された

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公園のブランコをジッと見てるとなぜか、無性に虚しくなる。 子供の頃、友達と二人乗で何処まで高くこげるか張り切って、臨死体験した事を思い出したからでもなく、 クビになった事を家族に言えなくて、公園のブランコで暇を潰すリストラリーマンが連想されるからでもない。 ただ、生理的に何気なく虚しいと感じるのだ。 コンビニで買った弁当からは湯気が立っていて、まだ冷めない内に箸を割ってご飯をかき込む。 座ったばかりのベンチが冷たく、尻から全身に冷気が回りそうだ。 弁当と一緒に買った温かい缶コーヒーを食道に流し込んで紛らわそうとするが、結果的にその水分はすぐ尿意と化す。 ヘッドホンに流れる"いかにもインディーズバンド"な曲は、まだサビの部分まで行ってない。 しかし、尿意に負けてしまうのも時間の問題と悟った俺は、渋々曲を止めて公園のトイレに駆け込んだ。 流石は平日の昼。 トイレはおろか、公園にすら人はいない。 俺は一人のんきに口笛を吹きながら用を足す。 だがその途中、突然それは正体不明の声によって妨げられる。 「動かないでください」 すぐ後ろから突然聞こえたのは若い女の子の冷徹な声だった。 何がなんだか解らないまま後ろを振り向こうとすると、頬に冷たい金属が当たった。 近すぎてよく見えない。 そう思った俺は彼女の腕を掴もうとする。 その瞬間、"カチャン"と何かが鳴った。 これは・・・ 銃の撃鉄を起こす音。 この時初めて、自分が命の危機に晒されている事に気が付いたのだ。 「大人しくするから・・・撃つなよ」 慌てて小便器の方向に向き直ると、頭に突き付けられていた銃が腰あたりに当たった。 「どうして・・・」 「え?」 「どうして本物だと思うんですか?」 「どうしてって・・・」 「モデルガンだとは思わないんですか?」 「いや、思わないな」
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