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ビルや店の建て並ぶ町中の一角にある、小さいレトロな喫茶店。
俺の行きつけの店で、店員には顔見知りも多い。
その店の奥の目立たない席に、俺と少女は向かい合わせで座る。
「何にするんだ?」
俺の問い掛けに、少し悩んでから彼女はメニュー欄を指差す。
「これ、お願いします」
「これでいいのか、量少ないけど・・・」
「少食なので」
頼んだのは、この店のメニューでかなり量の少ないスパゲティーだった。
それから彼女はブレザーを脱ぎ、制服のリボンを少し緩める。
綺麗な白い肌、
その腕には切り傷で出来たようなカサブタが幾つも見られた。
彼女は今までどのような人生を歩んで来たのか、
少し気になってきたような・・・
いや、誘拐被害者の俺には関係のない事だ。
それより、この少女から逃れる術を考えないと。
「お待たせしま・・・って、島崎くんじゃないですか」
顔を上げると、そこにいたのは顔見知りの店員の和泉桃花(いずみとうか)だった。
注文したスパゲティーを持って固まったままこちらをジッと見る彼女。
ガン見されるのも無理は無い。
今年23歳になるまでほとんど女に縁の無かった俺の向には、暗い表情の女子高生が座っているのだから・・・
「い、いや、違うんだ。この娘は俺の親戚で・・・」
「なるほど、親戚ですか。羨ましいです!私もこんなカワイイ親戚がいたらなぁ」
助けてくれ!この女は銃を持っているんだ!
なんて、ここで言ったら間違いなく最悪の事態になるだろうな。
和泉に苦笑されるか、少女に射殺されるか・・・
どちらにせよ俺は"抹殺"される。
皿とフォークを接触させない器用な食べ方をする少女。
少し巻かれたスパゲティーを一口噛み切った後、俺の方を見た。
「身分証明書はありますか?」
「免許証ならあるけど、何に使うんだ?」
「あなたを知るためです」
それなら俺に直接聞けばいいのに。
やっぱりよくわからない女だ。
「風見耕太、23歳ですか。ぼくより7つ歳上ですね」
「てことは16か。高1か高2だよな」
「高2です。今はもう高校に行ってませんが」
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