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泣きすぎて、ダルい。
真っ赤に腫れた目元。暗い表情。
一人の少女がフラフラと歩いていた。
手に持っているのは、杖だけである。
少女は、目が見えない。
盲導犬は居た。
ウィンディーと言う、ラブラドールだった。
ラブラドールのくせに、少し癖毛で、それが彼のチャームポイントだった。
ウィンディーは昨日、死んだ。
悲しくて
悲しくて
気を紛れさせようと、親にも伝えず一人で外へと出た。
真っ赤に泣き腫らした目に、当たる風が、ヒリヒリと痛む。
少女は、無心で歩き続けた。
───暗い……。
暗い。暗い。暗い。
何も見えない。
ウィンディーがくれたあの暖かい光は、もうない。
「そこの人……!!危ない!!!」
突然の大きな声に少女はハッとする。
───そこの人って……私?
と思い、足を止めてみた。
まわりの声がよく聞こえる。
───騒ついてる……?
「お嬢さん!!早く!そこから移動して……!」
切羽詰まったような人の声。
ブーブー───────!!!
「きゃあああ!!」
車のクラクションの音。
誰かの、悲鳴。
ドンッ─────!!!
と言う鈍い音。
身体中に走る、鋭い痛み。
────私、ひかれたの……?
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