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* * * *
「ん……」
少女が、ゆっくりと重い瞼を開いた。
ぼんやりとする頭を抱えて、状態を起こす。
───ここ……どこ?
見えない瞳を閉じ、耳を澄ます。
少女に出来る、唯一の情報収集である。
「人の声が、何もしない……」
聞こえてくるのは、微かな風邪の音と、何か虫の声。
───あれ?私……どこも痛くない?
たしか、自分は車に引かれたはずだと、少女は眉をひそめ、首を傾げた。
「あっ……」
そうだ、連絡を取らなくては。
スカートのポケットを漁るが、何も見つからない。
「け、携帯忘れたのかな……」
どうしよう、とうなだれてから思い出した。
「そうだ!杖!」
たしかに持っていたはずの杖を手探りで探す。
───あ、あった!
ピタリと手に触れたそれは、まさしく己の物で、少女はホッと胸をなで下ろした。
心細い中で、私物が見つかったことはかなりの安心感をもたらしてくれる。
───そう言えば、ここ……砂利道?
おかしい。
自分はこんな場所を歩いていた記憶はない。
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