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不安と恐怖が段々と大きくなっていく。
少女がギュッと自らを抱きしめた時だった。
ジャリ───。
人の足音が耳に入る。
「っ!だ、誰か居るんですか……!?」
もしかしたら助けてくれるかもしれない、と淡い期待を抱いて、声を張り上げた。
足音は、少し間をおいてから、少女に向かって近づいてくる。
───き、気づいてくれたんだ……。
安心して警戒を解いた時、ピタリ、と首に何かが触れた。
「えっ……?」
思わず声が漏れる。
「暗くてよく見えませんが、その声。
女性ですね?」
「え、は、はい」
───男の人の声だ……。
少し高めだが、男の声。
その威圧感に、少女はまた強張る。
「あの……今は、夜ですか?」
「は……?当たり前でしょう。
何を言っているんです」
「や、その……。す、すみません……」
少女はあまり、人と話すのが得意な方ではなかった。
初対面の人と話す緊張で、言葉が思いつかない。
───私が家を出たのは、まだお昼前だったのに……。
そんなに長く気絶していたのだろうか、と一人小さく首を傾げた。
「貴女……その、手に持っているのは何ですか?」
「つ、杖のこと、ですか?」
「杖?それが?」
今まで淡々としていた男の声が、少し上擦った。
「……それは、何で出来ているんですか?」
「何って、多分、木製……あ、あと、プラスチックじゃないでしょうか……」
「ぷ、ぷらす……?」
言葉がつかえる男に、少女は何も言えずポカンとする。
「新手の武器か……?」
男が小さく呟いた。
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