始まり

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「え、あ、あの……」 「屯所へ連行します。一緒にきてください」 「と、屯所……?」 キョトンとしていると、男が少し声を低くした。 「何をしてるんです。 早く立ってください」 「は、はい!すみません! あ、あの、でも、先に首にある物をどけて頂きたいのですが……」 「ああ。失礼。 忘れていました」 やっと首に当たっていた物が離れて、息を吐く。 カシャン、と何かの音がした。 「ち、ちなみに、今首に触れていた物って何ですか……?」 「……刀に決まっているでしょう。 貴女、先ほどからどうかしたんですか」 「か、たな……? え!?刀っ!?」 なんだ、それは。 とあわあわと優笑が震えだす。 冗談にしては笑えない。 だが男は優笑には構わず続ける。 「鳥目にも、程がありますよ」 鳥目、と言われて、少女は口を詰むんだ。 「ち、違います」 「は?」 「私は……その、目が見えないんです」 そう言うとなぜか、男は黙ってしまった。 暫くの沈黙の後、男がまた口を開く。 「それは……、盲目と言うことでしょうか」 「は、はい」 「……そうですか。 では、その、ふ、ぷ、ぷらす……」 「プラスチック……」 「そう。それを貸してください」 杖がなくては、少女は歩くこともままならない。 かなり酷なことを言う男に、少し理不尽さを覚えた。
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