影ある所に光あり

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ワイティックを出た一行が初めに向かったのは、レアンという村だ。帝都ラティパックへの街道の次の通過点である。 その村で夕食を取りながら、エルガーツは微妙な居心地の悪さを感じていた。 まず右。 ネトシルがむすっとしている。 そもそも基本的にこの獣っぽい女は無愛想だが、今日は無愛想というより機嫌が悪い方向である。瑠璃色の目の底に、怒りがくすぶっていた。 次に正面。 これはまぁ、そこそこの表情で、むしろ微笑みながら、ラシークが具沢山の根菜スープを口に運んでいる。 その所作は優雅そのもので、美しい人間は仕草の一つ一つまで気合が入って美しいのだと溜息が出る程である。 それはエルガーツだけでなく周囲の人間も同じ感想を持っているようで、流石にじろじろ見るような輩はいなかったが、ちらちらと窃視しているのは店中のほぼ全員と言って良かった。 そしてそれを連れている男であるエルガーツには、じろじろと容赦のない視線が寄せられていた。特に同性からは、それはもはや突き刺さるが如くだった。 麦藁色の髪に若草色の目、素朴な顔立ちに見合う飾り気のない立ち居振る舞い。青年と少年の境にある体にまとうのは、儀式服のような衣装のラシークと違って埃っぽい旅装である。 取り立ててラシークに釣り合う見た目でも身分でも無い分、「なんでお前が」という妬みの念が強いのだろう。
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