マルボロの吸い差しを潰して

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急に青年が能弁になったので、私はたじろいだ。 「私は…。」 「僕は君とは違うよ、僕は自分を護る為にしか相手を攻撃しない、君からは僕を攻撃しようとした。だから僕は君を攻撃しただけだよ。」 澄んだ瞳で私を睨み付ける青年。綺麗な顔だ、と場違いな事を考える。 私はこんなところまで来て、こんな事をしているのが馬鹿馬鹿しく感じられたので、素直に白状した。 「だって、私も、此処に死にに来たんだもの。酷い事言って、ごめんなさい。」 私の謝罪の言葉にも、さして興味がないのか、青年は曖昧に頷くだけだった。 暫くの沈黙。 「この公園、昔来たことがあるんだ。」 急に青年が喋りだしたので、私は顔を上げた。 「初めてこの公園に来た時、僕は小学生低学年だった。遠足で来たんだ。僕はその時、いじめにあっていた。クラスのリーダー格の男の子に目をつけられてね。面倒な事になったな、とは思ったけど、僕は刃向かわなかった。刃向かう方が面倒だったからさ。僕はいじめを受け入れたんだ。耐えた、って云うのとはちょっと違う。この違い、分かる?」 「うん、何となくだけど、分かる、気がする。」
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