マルボロの吸い差しを潰して

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小さく頷く青年。 「うん、話が逸れちゃったね。話を戻すけど、遠足の時、僕はこのドームに閉じ込められたんだ。リーダー格の男の子がドームの入り口を指で示して、『入れよ』と言った。」 青年は、そのリーダー格の男の子の真似をするように、身振りを交えて話した。 「これから起こり得る事が、安易に想像できたから、恐かった。だけど、その時僕は既にいじめを受け入れる覚悟を決めていた。だから、素直に従った。『今からお前を閉じ込める。いいか、絶対声を出すなよ。』リーダー格の男の子にそう言われて、僕は頷いた。」 青年はそこまでほぼ一息で喋り続けていたが、疲れた様で黙り込んでしまった。私が無言で煙草の箱を差し出すと、手刀を切り、煙草を一本抜き取った。
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