31人が本棚に入れています
本棚に追加
その頃には、お酒を飲んでいたというのに、素面に近い状態に戻っていた。頭の中だけが妙に冷静になっている。
青年の話には余り現実味を感じられなかったが、彼の切迫した雰囲気からすると、嘘を言っている様にも感じられない。
だとしたら、その経験が彼をどういう人間にしていったのだろう。
「君、明日もこの公園、来る?」
不意に私の口を突いて出てきた言葉は、私自身にとっても思いもよらぬものであった。私は死のうとしていたのではなかったのか。
「うん、毎日来てる。僕、さっき君が言ったみたいに、きっと、明日も死ねないと思うけど。来なきゃいけないんだ、毎日来なきゃいけないんだよ、僕が精神の均衡を保つ為にはね。」
「もし、そのバランスが崩れたらどうなるの?」
興味本位で尋ねる私。
「その時は、僕は本当に、人を殺してしまうかも知れない。」
最初のコメントを投稿しよう!