マルボロの吸い差しを潰して

3/15
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/489ページ
しかも、私はその噂通りに死に場所を求めているのだった。 一本道を北上していくと寂れた公園がある。その公園に面した林の中で、何人もの首吊り死体が発見されているという。 私は一人で死ぬのは嫌だったのかも知れない。私を見守るのが生身の人間でないとしても。そうでもしないと、余りにも自分が惨めに感じられる様な気がしたのだ。 死ねば何も変わらないのだけど。 脚が痛くてその場に蹲った。最期に一本だけ、煙草を吸おう。エルメスのシガーケースからマルボロを一本取り出し火を点ける。くねくねと立ち上る紫煙を目で追うと、眼前に空が広がっていた。木々以外遮るものが何もない大空を仰ぐと、綺麗な満月が私を見下ろしている。 命を絶とうとしているのにも関わらず、頬に暖かいものが伝う。
/489ページ

最初のコメントを投稿しよう!