マルボロの吸い差しを潰して

8/15

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/489ページ
無言で酎ハイを飲む私達。私はちらちらと青年を観察した。 身体は高いが線が細く、マッチ棒の様な印象を受ける。物憂げに虚空を見詰めるくりっとした二重瞼の瞳。どことなくおどおどとした印象が、私と同じ匂いを感じさせた。 自分の事をこんな風に言うのも癪だが、様々な人や、物に虐げられてきた人間だと直感した。 「ねえ、君はよく此処に来るの?」 「うん。」 「煙草あるけど、吸いますか?」 「ありがとう。」 気を遣って話し掛けているのに、青年の返答は素っ気ないものだった。 生きる気力を失っているであろう青年の横顔を眺めている内に、段々私の中で黒い感情が首をもたげてくるのを感じた。 この青年を、いじめてやろう。
/489ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加