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現状とここに至る過程
牢屋である。
何処に居るのかと問われればその一言に尽きる。
いかんせん、この町、この国、果ては島国か大陸かなどといった土地の情報すら持たない状況なので、他に言える事が無いのだ。
強いて目に付いたものを粗方挙げてみる事にしよう。
側面一方は縦に伸びた金属の棒が並び、そこを除いた全ての面が、石畳の個室。
ひとところには家畜用としか思えぬワラ蒲団。
何故かそこだけ衛生的で良心を感じる洋式の水洗トイレ、但し花を摘む現場を隠す囲いなど無いが。
鉄柵の向こうには廊下を挟んでの対面といった形で、事務用と思しき机が置かれ、今日も今日とて牢番の騎士さんが私の花摘み等を見張るのである。
それはもう、穴が空かんばかりの凝視を以てである。
これが今現在の私の居る状況であり今見えるもの全てだ。
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