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「いそうろうそう?」
駅から徒歩20分、バスで10分。
古いトタン張りの造りで、築40年の2LDK。
今にも崩れてしまいそうな壁に貼られた粗末なプレートを見ると、思わずため息が出た。
「随分言いづらい名前なんだな」
居候荘。
それが俺達の新しい生活の始まりの場所。
「友ちゃん、贅沢ばっかりいっちゃだめだよ」
「わかってるけどさぁ・・・」
駅から近めで、とにかく安い場所を・・・とは言ったが、気が引けるような古臭さだ。
「つかマジで、ここでいいの?」
トタン張りの古びた外装。
震度3で倒れてしまいそうな、明らかに虚弱な出で立ち。
いくらお互いに大学生だからって、お金が無いからといって、生活の場がこんな危急存亡とでも言えそうな場所でいいものなのか。
俺は自分の甲斐性の無さをひたすら恥じていた。
「あのね、私は友ちゃんがいればどこだっていいの。
なんだったら洞窟とかでもいいんだよ?」
「んー、なんか申し訳ないなぁ」
「私が同棲したいって言ったのを友ちゃんが聞いてくれたってだけで私は満足なの。ね?」
そう言ってにこっと微笑む。
なんて欲のない良い子なんだ・・・
彼女の名前は翠(みどり)。
俺は中学で半ばストーカーの如く三年間ひたすら翠を思い続け、卒業式でぶっつけで告白をするもぐだぐだに。
真面目に首吊りを考えたがまさかのあっさりOK。
そこから今までずっと仲良くやっている。
そして今日、同棲を始めるため、このオンボロな居候荘に引っ越してきたのである。
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