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すっかり見慣れた住宅街を歩いていると、うしろのほうから大きな声が聞こえてきた。
「おーい、アカネー」
アカネは溜息とともに振り返り、足をとめた。駆け足で詰襟の学生服を着た少年が近づいてくる。幼なじみの白井浩二だった。クラスは違えど、幼稚園から今までずっと一緒で、今もこうして一緒に登校している。
「もう、何度言ったらわかんのよ。こんな道のど真ん中で大声ださないでよ。恥ずかしいじゃない」
浩二が追いついたとたん、アカネは頬を赤くして言った。そっと周りをうかがうと、通学路というだけあって、自分たちと同じ制服をきた生徒たちがちらほらいる。彼らはみなこちらを見ており、クスクスと笑っていた。
「しょうがねえじゃん。名前呼ばねえと、だれに向かって言ってんのかわからねえんだろ」
もっともなことを述べながら、浩二はアカネと肩を並べた。まだ幼さの残る顔を向けてくる。
間近でその顔を見ると、アカネはいつもドキリとする。やはり年ごろの少女ということもあってか、浩二を異性として意識してしまうのだろう。
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