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よかったじゃない。これが髪の毛だったらフンがまとわりついて大変だったはず。うん。運がついたと思えばいいんだわ。そう思うと、自然と笑みがこぼれる。
「へえー。アカネって、ポジィティヴなんだな」
「これぐらい平気よ。髪についたわけじゃないんだし」
浩二の感想に、アカネは笑顔で答えた。
だが、これは序章にすぎなかった。
教室はしんとしていた。静かにときが流れている。
どうしよう。さっぱりわからない。机に置かれた問題用紙を、アカネは恨みがましく睨んでいた。英単語がずらりと並んでいる。これらを日本語に直さなければならない。英語は、彼女の苦手科目ではない。しかし書けなかった。たとえるなら、頭の中に白いものが降ってきたといえよう。つまり、ど忘れしてしまったのだ。
一時間目の英語の授業。眼鏡をかけた教師が入ってくるなり、
「今から抜き打ちテストするから。筆記用具以外しまうように」
プリントを配りはじめた。
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