恐怖邂逅

3/7
前へ
/31ページ
次へ
 白いものは依然として落下をつづけていた。まだるっこいスピードで、確実に彼のもとに向かっている。 「ああ、先生。やっと、やっと会えました」  突如、感極まる声が部屋に響いた。まだ幼さの残る、少女の声。発したのは、おそらく白いもの。  その声を聞いた瞬間、彼はさらに大きく目を見開いた。同時に、あまり思いだしくない、昔の記憶がふつふつとよみがえってきた。 「きみ、いい加減によしてくれ。こっそり人の写真を撮ったり、家までついてきたり、おまけに、こんな手紙までポストに入れたりして。なにを考えてるんだ」  一年前。ある女子高校で、彼が教鞭を執っていたころである。  手紙の束を置き、彼は困りきった表情で女子生徒を見やった。  その女子生徒は以前、彼に告白してきたのだった。もちろん彼は断った。教師と生徒が恋愛感情を伴ってつきあうのはよくない。このような考えを持っていたからだ。  ところが、このあとから、女子生徒の彼に対するストーカー行為がはじまった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加