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遺書が発見されたのだ。そこには、こう書かれていた。
『やっぱり、わたしはあきらめきれません。いつか必ず会いにゆきます。ですから、そのときまで待っていてください』
だれに宛てた遺書なのか、周囲の者たちはわからなかった。ただ一人、彼だけがすぐにわかった。間違いなく自分へのもの。それからというもの、彼は不気味な感じに襲われつづけ、とうとう辞職したのだった。
「その声……。まさか、本当に、きみなのか?」
彼は白いものを見つめながら、震える声で聞いた。どうか答えないでくれ、と願いながら。
「先生、わたしの声が聞こえるんですね」
それに反し、声はうれしそうに答えた。
「信じられない」
「わあ。うれしい。先生、ほら、わたし、ちゃんと会いにきましたよ。こんな姿だけど、先生の顔が見えるんですよ」
白いものは喜びを表すように、左右に大きく揺れながら、
「ここが先生の部屋。はじめて入った。はあ。そして、これが、先生の、香り……」
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