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視線はそらさないまま、動けない…。
「綺麗な、紅(あか)やねぇ。ルビーみたいやわ…。」
はっきりと聞き取れた言葉は、関西弁。
多分、京都のなまりだろう。
改めて、天女をみる。
腰まである黒髪に、朱袴。肩には、多分、女物だろう…、紅に紫の蝶が舞う着物を羽織っていた。
一風変わった出で立ちだが、言葉使いに合っていた。
『お前も、綺麗だな…。』
手を伸ばして目尻をそっとなで、その紫を覗き込んだ。
さっきよりも近くで視線が交差する。
「なんや、どきどきするわぁ。」
おかしそうに、それでいて少し恥ずかしそうにころころと笑う。
その笑顔に、俺も胸の鼓動が速くなるのがわかった。
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