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~2人の友~
「友香里さん…、私の話を聞いてくれますか?」
もう、何も言えない…、言葉が出ない。
件の問いに、私はゆっくりと頷く…。
「ここ、件の館は貴女のお察しの通りの機関です。
創立者の事は守秘義務があるのでお答え出来ません。
創立者の目的は、未解決事件を解決させる事、及びそれが可能な人材の確保。
ここにある本の全ては、被害者と、被害者家族の願いなのです。
だからこそ、貴女の父である榎本祐一氏もまた、我々と志を共にしたのです。」
「…お父さん、も…?」
「2ヶ月前、榎本氏と会っていたのは、貴女の事で話があったから…。」
私の…、事?
「私は、貴女の推理力を高く評価しています。
もし、貴女さえ宜しければ私と、ここの全てを話し、協力していただきたかった。
ですが、榎本氏が激しく反対され、この話をする事を口止めされました。」
「何で…、お父さんは反対したの?」
「全てをお話し出来ない故、説明が困難なのですが…、
簡単に言うと、我々の行動は“危険”が伴うからです。
私が、貴女に全てをお話するにはまず、
創立者に貴女という優秀な人材の存在を知らせ、
貴女に協力を仰ぎ、お互いの合意を得なければならない。
しかし、榎本氏に口止めされ、彼はそのまま亡くなりました。
ですから、私には彼の遺言となったこの約束を守る義務があるのです。」
「…父の、遺言だから…?」
「彼は、互いの苦悩を分かち合い、同じ理想の元、行動を共にした私の友人。
我々には、貴女と過ごした時間では及ばぬ程の、更に強い絆がある。
例え貴女に何を言われようと、この約束だけは破る訳にはいかないのです。」
「だったら…、何で今まで私をここに入れてくれたの?
最初から、追い出せばよかったのに…!?」
「彼との約束には、ここへの立ち入りの制限は含まれていなかった。
いえ…、ただの屁理屈、私のエゴだったのかも知れません。
彼と約束をしておきながら、貴女という人材に執拗に執着し、
どうしても手放す気にはなれなかった…。
彼が亡くなる前の、彼との諍いも、それが原因でした。」
これが…、父と件の繋がりの全て、私に話してくれた全てだった。
了
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