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~客か友人か~
「…最後にもう1つだけ、どうしても聞きたい事があるの…。」
「…いいでしょう、お聞きします。」
「あなたは、私の事を何だと思ってる…?」
あなたにとっての人材って何?他人って事?私は、友達じゃないの?
「質問の意図を理解しかねます、もう少し詳細に仰って下さい。」
「また誤魔化すの!?私を何だと思ってるのか!!答えて!!」
私は、信じたいんだ…、件を。
「それは友人としてですか…?それともお客様としてですか?
お客様としての貴女への心象でしたら、知的で好奇心旺盛な方だと…。」
客として…?今までのは客への対応だった…、そういう事?
「友人としては、破天荒、猪突猛進、天真爛漫で常識知らずな小娘…、ですかね?」
「何それ…、私の事を馬鹿にしてる…?」
「目が離せない、口汚い暴走少女といったところですか…。
もっとも、私の数少ない友人の中では、十分常識人ですが。」
件の表情が、少し柔らかくなったような気がした。
「…今までの仕返し?」
「何のことやら。」
件は、あっけらかんとした態度で目を逸らす。
私、件が隠し事してたから、それにむかついてここに来たんじゃなかったっけ?
なのに…、その本人の話を聞いてたら、何故か気分が落ち着いてきた。
「ごめんね、件…。」
「不法侵入のことですか?でしたら今回に限り目を瞑りましょう。」
…件に先導されながら、私は門の前まで歩く。
「何で今日に限って鍵を掛けてたの?」
そのせいで、無駄にヒートアップしてしまったような…。
よくよく考えれば、何でそんなに怒ってたのか、自分でもよく分からない。
「貴女に迫られると、何故かついつい余計な事まで話してしまうので。
実際、今日話した内容だけで、榎本氏との約束をかなり反故にしてますし。
口の軽い私の代わりに、榎本氏に謝っておいて下さい。」
「私が焚きつけたせいだから、仕方ないか…。」
件が門扉の錠を解き、大きく開け放つ。
「件、もう隠し事はしないで…?
答えられないならそう言ってくれればいいから。」
「貴女がそれをお望みでしたら…、そのように。」
了
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