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~重圧と目標~
同日、17時、件の館、2階カウンター。
件が連絡を終え、管理人室から出てきた。
「お待たせしました、すぐに動いてくれるそうです。」
私が今までに解いて来た作品は、全て過去にあった未解決事件…。
それをここで私が解決への糸口を見つけ、件がそれを誰かに報告し、
その情報を元に警察が動き、犯人を見つけ出し、その事件を解決する。
つまり、今まで件が言ってきた、“原作者への確認”とは、
警察への情報提供で、事件が解決したかどうかの確認だったという事だったのだ。
警察が捜査し、事件が解決し、メディアが取り上げて初めて正否が分かる。
だから、正否が分かるまで然るべき日数が掛かったのだ。
「これで解決してくれればいいんだけど…。」
「おや、いつに無く弱気ですね、何かありましたか?」
「そんな日もあるの…!!」
実際のところ、件からここの作品の事を聞かされてからずっとなんだけど…。
「…何かさぁ、責任感じるじゃない?
自分の推理で事件が解決するかも知れないなんて、
被害者の遺族の期待を一身に背負ってるみたいでさぁ?」
「あまり、気負う必要はありませんよ…?
本来、ここに訪れる方の推理は、あまり期待されてなかったのですから。」
「…私には、期待してないって事?」
「ここまで人が来ないとは思ってなかったので…。
ここが出来た当時は、“当たらぬも八卦”といった考えでした。
貴女がここを訪れてから、私の考えは変わりましたが…。
当初の目的から省みるなら、1つの推理が外れたからといって、
貴女が気にする必要は全くないのです。」
「…ありがとう、件。」
私の推理で、事件が解決するか否かが掛かってるという重圧は変わらないけど…。
「さぁ件…、早く次の事件を解決するよ!!」
ここ“件の館”にこそ、私の目指すものがあるような気がする。
父のように、誰かのために自分の出来る事を成すための何かが…。
そう思った時、下の階で扉の開く音がした。
「すみませ~ん!!誰かいますか~!?」
聞き覚えのある声が館内に響く…。
黒澤が教えたのか…、ちゃんと口止めしておくべきだった…。
了
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