~件と奈々子~

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~件と奈々子~

「どちら様でしょうか…?」 「あなたが“件さん”ですか?格好はともかく、なかなかの面食いですなぁ~。 あぁそうだ…、友香里は中にいますか?」 件が私の方を見上げて、眉をしかめる。 私がここの事を話したと思ってるんだろう…。 「いやいや、私じゃないって!!多分、黒澤の奴が…!!」 「友香里~!!あんたの彼氏見に来たよ~!!」 1mも離れてない位置で奈々子が急に叫んだので、件は痛そうに耳を擦る。 「あの…、ここは図書館ですのでお静かに…、」 「あぁ、ごめんなさい…。 私は友香里の親友で片桐といいます、いつも友香里がお世話になってます。」 件は頭を抱え、困ったような、怒ったような微妙な表情を見せてる。 物静かな件は、騒がしい奈々子とは合わないようだ…。 このままでは、私まで出入り禁止になりかねない。 私はそそくさと階段を下り、奈々子の襟元を引っ張りながら外に出る。 「奈々子!!何しに来たの!?」 私はかなり真面目に怒ったのだが、奈々子は満面の笑みを浮かべている。 「黒澤刑事が教えてくれたから来てみたの!! ねぇねぇ、あのコスプレ男が友香里の彼氏!?」 私も頭が痛くなってきた…、何で1番厄介な奴に教えたんだ、あの外道は。 「片桐さん、貴女は黒澤刑事からここの場所を聞いたとおっしゃいましたが…、 彼とはどういったご関係で…?」 「恋のキューピッドです!!あ、いや…、“でした”!!」 「まだ引っ張るか!!何がキューピッドか!!この出歯亀は!!」 「友香里さんも…、黒澤刑事と今も交流が?」 「あれ?件には言ってなかったっけ…?」 「…友香里さん、片桐さんも、とりあえず、中にお入り下さい、 あまり騒ぐとご近所様に迷惑が掛かりますので…。」 件は渋々ながらも、奈々子を中に招き入れた。 「いい奈々子…?図書館なんだから…、騒いだら駄目だからね?」 「分かったってば、友香里の彼氏に迷惑かけたら駄目だよね?」 何だか、また面倒臭い展開になりそうな予感…。 「…ようこそ、件の館へ…。」 あぁ、件がこんなに嫌そうに言ってるの、初めて聞いたよ…。 了
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