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~隠されたる真実~
「では…、何からお答えしますか?」
件の表情はいつもと変わらない、薄い微笑…。
けど今の私には、それが無知なる者を見下す嘲笑にしか見えない。
「嘘は吐かないで…、私は真実が知りたいの!!」
「先程も言いました、“私にお話できる事なら”と。」
全てを答えるつもりはない…、そういう事か。
「まず、ここにある本は何なの!?
以前、あなたが私に説明したのは嘘なんでしょう!?」
「…あなたのご想像通り、ここにある物は全て、真実の過去にして負の財産。
第三者の視点により紡がれる、絶対なる回答を求める被害者たちの願い。」
「何で、こんな物を集めたの!?」
「それが必要であったから…、それ以上はお答え出来ません。」
「ここの記録は、全てあなたが集めたの…!?」
「人々の想いは、自ずと一点に収束していくのです。」
「回りくどい言い方はしなくていい!!はぐらかさずに答えて!!」
「この件に関しては、これ以上はお答え出来ません。」
「ちっ…!!この建物を建てたのは誰!?あなた!?」
「過去の真実を求める者は、被害者のみに非ず。」
これも…、答える気は無いということか…。
「なぜ、答えられないの…?」
「私にその権限は無く、貴女にその資格が無いからです。」
「その資格は誰がくれる?資格さえあれば話してくれるの?」
「その資格を与えし者こそ、資格を持つ者、私ではありません。」
「それじゃあ…、あなたは何者なの?」
「私は大神崎件、件の館の責任者であり、また同時に管理者でもある。」
「この前、あなたと一緒に解いたあの事件は、私の母の事件?」
「…左様です、故榎本光氏も祐一氏も、過去の真実を求めし者でした。」
「あの時、件は知ってたの?あれが私の母の事件だって…。」
「いいえ、それを知ったのは貴女の推理を話した後です。」
「それを…、誰に?」
「資格を持つ者…、これ以上はお答え出来ません。」
何で、教えてくれないの?私と過ごした日々は、件にとってどうでもよかったの?
私を信じてくれてると思ってたのは…、全部私の勘違いだったの?
「私は…、件を信じても…、いいの?」
了
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