矢口さん家のお宅

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そんな時である。 パタパタとスリッパを鳴らし、階段を降りて来る音がする。 そしてその人物はリビングの扉を開ける。 「……アンタ達。まだそんな格好してるの?」 姉の雨音(あまね)である。 見た目的には我が母、日和の髪を短くした感じと言えば伝わりやすいだろうか。 ただ髪の色は少し赤っぽく染まっている。 目つきは少し釣り上がり、口調も少しキツイ。俺の一つ年上の高校三年だ。 「とりあえず着替えて来なさい。お客さん来たらどうすんのよ」 姉さんが腰に手を置き、大きな溜息を吐く。 「父さん、寝起きだからもう少しこの格好で良いかなって――」 「ダメ。遅く起きたパパが悪い。ほら、俊平も雨夢も着替えて来なさい!!」 ……我が姉ながらめんどくさい人物である。お前は母親かっての。 いや、違うんだけどね。
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