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「どうぞ・・・。」
「ありがとう。」
彼に何かお礼をと思い、家に上がってもらい紅茶をごちそうした。
彼は綺麗な指で、紅茶に角砂糖2つとミルクを入れた。
『甘党なんだ』(笑)
なんて思いながら、私は彼をチラ見した。
彼の横では、はるかはオレンジジュースを美味しそうに飲んでいる。
また彼を見ると、彼もまた私を見つめていた。
ドキンッ!
心拍数が上がる。
『ホント綺麗な顔してる。緊張するじゃん。』
緊張するのは当たり前だ。
夫と離婚して二年。
男性を家に上げたのは久しぶりだ。
夫は、財閥の一人息子。
その点、私はサラリーマンを父を持ち、地方の平凡な短大を出た普通の女。
夫が良く通っていたイタリア料理店のアルバイトをしていた私は、ある日、夫が女性に殴られている所を見付け、助けたのである。(笑)
それから夫はあらゆる手で私を口説き落とし、私達は結婚に至った。
結婚が、新聞に小さく掲載されたくらいだ。
夫は完璧だった。
仕事をし、はるかを愛し、私のことも大切にしてくれた。
2年前突然、お前達以外に大切な人ができたと打ち明けられた。
私は、笑顔で承諾した。
元々、不釣り合いな人間同士だと思っていた。
でも夫は、私にそんな惨めな思いをさせまいと一生懸命庶民的な生活に合わせてくれた。
そんな夫の愛を感じていたから許せたのだろう。
夫やその家族は、それなりの慰謝料と、このマンションを私にくれた。
始めは、田園調布の一等地を譲る話しが出たが、はるかもいるので、庶民的な生活をさせたかった。
私の要望で、私の実家に近い、ファミリー向けのこのマンションに引っ越して来たのだ。
お金には困らないにしても、いつ何があるか分からない。
大人は働いてお金を稼ぐ、そんな当たり前のことも、はるかに学ばせるため、ファミリーレストランで働いているのである。
「あの・・・。」
彼が話し掛けて来た。
「えっ・・・あ、はい・・・?」
「お腹空いちゃった・・・。」
彼はお腹を擦りながら、上目遣いで照れくさそうに言ってきた。
「・・・・・・・・。アハッ。」(笑)
思わず私は笑ってしまった。
「オムライスでいい?」(笑)
「うん!」
私の笑顔のせいか、オムライスせいか、彼は満面の笑みで答えた。
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